2023/03/06 10:40

筑摩書房『捨てられないTシャツ (都築 響一 編)』を読みました。
有名な人も交じっているようですが、9割は一般人の、70枚にものぼる「捨てられないTシャツ」の写真と、持ち主の思い出がオムニバス形式で綴られています。
無名の一般人の半生について記したものに触れる機会はほとんどないので、とても興味深く読みました。
本の冒頭に ”Every T-shirt tells a story.” と書かれているように、まさに、どんなTシャツにも物語があるんだなぁと実感しました。
自分の音楽遍歴と結びついているものも多かったのですが、自分の骨折記念にお世話になった人に配ったオリジナルTシャツ、なんていうものもありました。
個人的にとても笑えたのが、いくつもの不気味な人の顔が並ぶいちばん上に「ネズミ講」と書かれたTシャツ。イラストの意味を外国人に聞かれ、”One for all, all for one.”と答えたそうです。よくとっさに出てきたなぁ。
ユニークな柄のTシャツって、顔よりも先に目に入るものかもしれません。Tシャツが立派なコミュニケーションツールになりえるのですね。
また、ある36歳男性会社員の言葉が心に強く残りました。「競争の多いジャンルはやりたくない。そのかわり、自分の好きなジャンルの、自分の好きなところを、自分だけのやり方で伝えたい。」
70枚のTシャツと、70通りの半生を読んで思ったのは、どんな人生にもTシャツがあるということ。そのTシャツのまわりに本当にたくさんの人生の物語があるということ。
実直な人生から、これは本当に実話なの?と疑いたくなるような破天荒な人生まで、無名の様々な人々の半生に触れて、「わたしも、もっと自由に生きていい」としみじみ思いました。
この本を読んだら、私の思い出のTシャツについても語りたくなってきました。
「思い出のTシャツ」といえば一番に思い出すのは、モンチッチのTシャツです。もう手元にはないのですが、モンチッチの顔のアップに、頭のもじゃもじゃ部分がキラキラのスパンコールでできている、超ド派手なTシャツでした。20年近く前に500円で買ったものです。
お気に入りで、特にヘビロテしていたTシャツでした。銭湯で「お姉ちゃんそのシャツええなぁ」と見知らぬおばちゃんに声を掛けられたこともあったっけ。当時お付き合いしていた人との思い出がたくさんつまっていたため、辛い別れのあとに手放してしまったのですが、その辛さを乗り越えすっかり図太くなった今となっては、捨てずに持っていたら良かったかなぁと時々思います。ド派手なスパンコール・モンチッチのTシャツを着たロックなおばちゃんも悪くないなって。
あなたにも、捨てられないTシャツはありますか?どんな思い出と結びついていますか?